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忘れられた作品

「漫画
の神様」手塚治虫さんは、日本の漫画とアニメーションの現在の形を作り上げた有名な作家です。代表作の一つとして「火の鳥」シリーズが世界的に知られています。オリジナルストーリで、手塚さんが自ら手がけた「火の鳥」のアニメ映画化が大人気になるはずだと思われるのが自然です。
  しかし1980年に公開した手塚治虫さんの原作・構成・総監督の劇場用長編アニメ「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」は人気を得られませんでした。 手塚は「公開は10年早かった」と言い観客の未熟さのせいにしていたそうですが、十年、二十年が経っても評価が変わりませんでした。
  皮肉なことに、責任は手塚自身にもあります。1983年のテレビ放送のために122分の映画を95分にカットして、物語の流れを大きく損ねてしまったのです。あまりにも大幅にカットされたその「監督バージョン」が劇場版のファンをうんざりさせた上で、新しい観客の反応も冷たかったらしいです。
  LDとビデオになったのも短縮版だった。二十年後、2001年に劇場版が放送されるまで、完全な「2772」がアニメコミックでしか観れないものとなっていた。

  日本公開の後間もなく手塚さんは「2772」をアメリカへ持っていって、第一回ラスベガス映画祭でアニメーション賞を受賞しました。 サンディエゴ・コミック・コンベンションでも上映がありました。 しかしアメリカで日本アニメ熱はまだ遠い未来のことでしたので、コンベンションの参加者が感動したにもかかわらず「2772」は一般の映画館へは来ませんでした。
  1995年になってやっと「Phoenix 2772」という英語吹き替え版がビデオになってBest Film & Video社から出ました。長さは二時間でしたが、翻訳と吹き替えがきわめて悪質でした。それに映画の画面サイズをビデオにあわせて調整した際、画面の両端が切れてしまいました。二人の登場人物が画面の両端から向かい合って会話していて、手振りしか見えなくなってしまったシーンもありました。その「フェニックス2772」の人気が薄かったのは驚くことではないでしょう。

  ヨーロッパでは「2772」の運命はそれほど悪くありませんでした。ドイツで「Space Firebird」という題で115のビデオ版が出ていますが、あるサイトのレビューによると吹き替えは「ややヒステリー気味だが、まずまず」です。相当のファンもいるらしいです。
  ロシアでは1992年頃に一度だけ、LD版と思われるテレビ放映がありました。1998年に手塚治虫誕生70年を記念して日本大使館の文化センター がモスクワで手塚のアニメ作品の上映会を開催したとき、その中にも「2772」がありました。

  2003年7月にやがて「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」の劇場公開時のノーカット完全版が、東宝によってDVD化されました。人気が劇的に上がったわけではありませんが、「2772」は手に入れやすくなったし、広告で「スケールの大きなストーリー展開と奥深いテーマを味わうことが出来る、 手塚アニメの総決算とも言える内容」が賛美されるようになりました。

  そして英語界の一部も2006年6月に本当の「2772」を経験できるようになりました。オーストラリアのMadman社が東宝のDVDをもと「Space Firebird 2772」という題で 英語版を発売しています
  このオーストラリア版DVDには日本語のほかに英語吹き替えと英語字幕があります。字幕は新しい翻訳らしく、以前とくらべてかなり忠実だといえます。しかし吹き替えは皮肉にもあの1995年のビデオ版のままです。観る人が吹き替えと字幕の内容がまるで違うことに気づくかどうかわかりませんが、吹き替えの聞きづらさが幸いになると思います。下手な演技を聴くよりきっと日本語+字幕のほうを選ぶでしょう。

  ともかくDVD化のおかげでこの映画はアニメーションの歴史に残って消えないでしょう。

2006年10月

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